独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「由莉奈に謝らなければいけないことがある」
甘い雰囲気だったのに急に謝罪を口にされ、ドキドキしながら次の言葉を待つ。
「社長にはなれなかった」
「へ?」
想像とかけ離れた言葉を聞いて、間抜けな声が漏れる。
「父に連日直談判していたのだが、修行のために外に出ていた若造が戻ってすぐに社長になれるほど甘くないと突っぱねられた」
よほど不服だったようで、声が不貞腐れている。でも、海斗さんのお父様の意見は正しいと思う。
「でしたら、今回のパーティーに海斗さんは参加されないのですか?」
「いや。お互いに副社長で妥協した」
私には到底わからない人事を、妥協と言う海斗さんに思わず吹き出す。
「副社長でも私には雲の人です」
「副社長では格好がつかないだろう?」
未だに不満げな海斗さんに、私は自分の気持ちを伝える。
「私は、社長の海斗さんではなく、海斗さんがいいんです」
私の意見を聞き、力を入れていた眉を緩める。
「ああ。そうだったな。つい男として見栄を張りたくなった。肩書なんて興味がなかったのに、由莉奈のためにならすべてがほしくなる」
言葉の端々に愛情を感じ、なんだかくすぐったい。