独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「肝心なことを聞き忘れていたよ。泊まるホテルはどこ?」
この話の流れで聞かれ、心臓がジャンプした気がした。海斗さんもさすがにしまったと思ったらしく、口早に言い訳を並べる。
「あ、いや。ちゃんと送り届けなきゃいけないからね。川平湾は石垣島の中間に位置するから、どこのホテルでも大丈夫だけれど、その後のことを考えると」
「ふふ。本当ですか?」
「本当だよ。俺、悪い男だけど、紳士だからね」
意味のわからない自信ありげな物言いに、また笑う。
「由莉奈ちゃんはよく笑う子だよね。こっちまで楽しくなる」
目を細められ言われるとドキッとする。お世辞だとわかっていても、『きみといても退屈なんだよね』と言われた元婚約者の冷たい眼差しも吹き飛んでいく。
「それは海斗さんと話していると楽しいから」
「おっと、これは殺し文句」
「ふふ。致死量に達しますか?」
「そうだね。イチコロだよ」
憧れの染谷さんと、こんな軽口を言い合えるなんて。