独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「昨日は予想外な報告があって、なかなか軌道修正を図れなかったが、よくわかったよ。正当法で行くから覚悟して」

 政略結婚の正当法って、なに?

 きょとんとしていると「由莉奈」と甘い声で名前を呼ばれ、顔を上げる。その一瞬の合間に唇が触れた。

 触れた先から熱を持って、動揺で声が震える。

「あ、の」

「考えごとしているときの唇、可愛い。石垣島のときからずっと思ってた」

「か、からかわないでくださいっ!」

 向けられているのは、目尻を下げたとろけそうな顔。

「からかってないよ。ほら、スペアリブが焦げる。俺を見つめていないで、鍋の中を見なよ」

「それは、海斗さんが!」

 文句を言いながら、木べらを動かして鍋に集中する。

 ヤダ。どうして?
 昨日よりもずっと甘い雰囲気。

 勘違いしそうになる邪念を振り払いたくて、無心で木べらを動かし続けた。
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