好きな人を追って生まれ直したら、まさかの悪役令嬢でした。
 ……とはいえ、どうやって話を切り出してあの輪の中へ入ろうか。

 中庭に到着したものの、3人はすでに和気藹々といった様子で楽しげに話を始めている。

 さっきまで遠巻きにいた女子達もその姿を見てられないと思ったのか何なのか、気がつけばもうそこにはあの3人しかいない。

 このタイミングを逃すのはもったいない。そう思って校舎の影からぬっと姿を現した。


「あら、その猫はあなたの猫だったの?」


 ミラが抱きかかえる猫に着目して、私は品良く背筋を伸ばして3人へと近づいた。3人は木の木陰で芝生の上に座って話し込んでいた。


「やぁ、スピカじゃないか」


 そうフレンドリーな挨拶を交わすのはボルックスだ。カストルはレグルスとも仲良いせいか、私に対する口調がかなり軽い。


「スピカ嬢、昨日門のところで倒れたって聞いたけど、大丈夫?」


 ボルックスよりも柔らかい口調で話しかけてきた方がカストルだ。二人は一卵性の双子らしく、外見はすごく似ている。

 後ろでひと房長い髪を結んでいるのがレグルスで、性格に関しては落ち着きのないのがボルックス。

 カストル方が少し大人びて見える。けれどそれくらいの違いだった。


「ええ、もう大丈夫よ。どうやら猫アレルギーが発症してしまったみたいで、その猫が昨日近づいてきただけで倒れてしまったわ」

「そうなんだ。可愛い猫なのに触れないのは残念だね」


 カストルはミラが抱きしめている黒猫を優しく撫でると、まんざらでもないのか猫も気持ちよさそうに目を細めた。

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