月の光に響く時
「・・・お・・かぁさん」


!!


目が覚めて、すぐに飛び上がった。


「お母さんは!!?」


「・・・」


そこはベッドの上。

隣には律鬼さんの姿があった。

また蒼家の城に連れてこられたと確信した。


「あ・・律鬼さん・・」


ズササッ

と思わずベッドの一番端へと身をすくめた。


「また私を・・」

「ああ。何度でも取り戻す」


でもそんな事よりも聞きたいのは。


「お母さんは!?律鬼さん、家の中から出て来たよね!?」

「・・・」


複雑そうな顔をしている。

口にする事を嫌がっている顔だ。


「誉が出て来て・・行っちゃ駄目って言われて・・・ねえ!?律鬼さんは見たの!?」


「・・見た」


「本当に!?」


思わず律鬼さんの腕を掴んだ。

お母さんの事が心配でたまらない。


「俺がお前の家に入ったのは、お前が桜鬼に攫われる前からだ。
他の鬼どもが月の石に関する情報を集めている可能性があったから、俺もそれを探しにな」


「攫われる・・・前」


という事は私がまだこの城にいた時に見たという事だ。

律鬼さんが一人で何処かに行ってしまった時の話。

喉が一気にカラカラになった。声が出せない。

私は律鬼さんの言葉を聞き入った。


「その時すでにお前の母は倒れていた」


「・・・倒れてたって・・」


ぐいっ

と引き寄せられ、顔を胸に埋められる。

まるで覚悟して聞けと言わんばかりに抱きしめる力は強かった。

そして律鬼さんは耳元で小さく呟いた。


「他の鬼に食われた後だった」


「!!!」


人生で一番のショックだ。

脳裏が真っ白になった。

そんな事が起こっていいハズない。


「あ・・あぁ・・」



お母さんが・・・・


鬼に殺された。

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