そして最後の嘘をつく
中1のとき、ショパン国際コンクールの
アジア部門に出場して賞をもらい、
僕はネットや新聞でかなり注目されて
天才ピアニスト、と騒がれた。

『天才ピアノ少年あらわる。』

そういう記事を後になって
何度も目にした。

あのときの僕は幸せだった。
記事で騒がれていることさえ知らず
ただ一途にピアノと生きていたのだから。

そのままで、いられたら良かった。

天才ピアニスト速水碧として
ずっと長い人生を生きられたなら
どれほど楽しかっただろう。

僕がピアノを弾くことは、
これから先の人生ではありえない。

弾かない、ではない。













弾きたくても弾けないのだから、
それで納得してはくれないだろうか。
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