そして最後の嘘をつく
彼女に出会ったのは今からちょうど
2週間ほど前のことである。

コンクールに出す写真を撮りたいから、
という名目で部活の三送会を
サボることに成功した僕は
ふらふらと夕方の町を歩いていた。

どうせなら有意義に過ごそう。

明日の部活で撮った写真を
見せろと言われたときのために、
夕日に照らされた商店街を撮る。

コンビニの駐車場で戯れる猫、
手袋を失くしたと嘆く少年と
それを懸命に慰めている少女。

この町の何気ない日常を
シャッターにおさめていく。

町をぐるりと1周していると
額に雨粒が落ちる。

雨が降ってきたようだった。

折り畳み傘をリュックから
取り出してさすと、頼りないそれは
風に煽られて何度もひっくり返った。
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