医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…

羽田の 到着ロビーを出て。


「圭介。今まで ありがとう。もう 終わりにしようね。」

「やっぱりな。涼子…そうくると 思った…」

「今なら まだ間に合うから…お互い 大切な人を 大事にしよう。」

「でも 今日 帰れたってことは まだ 大丈夫って ことじゃない?」

「ううん。今日のことは 2人への 戒め。これ以上は 許されないってことだよ。」



「あーあ。涼子と別れるの 寂しいな…」

「奥さんと子供が いるじゃない。圭介 これからは 家族を大事にして。」

「できるかな…?新しい彼女 見つけちゃうかもよ?」

「駄目。昼間の気持ち 忘れないで。次は 本当に 家族 失うよ。」

「そうだな…いつまで 続くかわかんないけど。頑張ってみるか。」

「うん。これからは 仕事仲間として よろしくね。」


私達は 立ち止ったまま 別れ話をした。


不覚にも 涙汲みそうになって

私は 圭介から 目を逸らす。


私の 大切な人は 京一だって わかっているけど。


今更 圭介との時間を 懐かしく思って。


「涼子。ありがとうな。仕事で 困ったことが あったら 何でも 相談しろよ。」

「うん。ありがとう…圭介 先に行って。私 お茶して帰るから。」

「そうか?わかった。仕事以外でも 相談に乗るからな?じゃあな…」


圭介は 柱の陰で 私を抱き締めて

離すと そのまま 歩き出した。


圭介の背中を 見送って

私も 逆方向に 歩き出す。


もし 圭介が 振り返っても

背筋を伸ばして 歩く私が 見えるように。


どんな 関係でも 断ち切る時は 寂しい。


だからこそ 私は もう迷わない…


京一を 失うことになったら

この程度の 寂しさでは 済まないって 気付いたから。


前を向いて 歩きながら 私の胸は

京一への思いが 溢れ出す。







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