医師の妻としての覚悟 ~寂しさと過ちを乗り越えて…
1人の夜 私は よく 母に電話をした。
『どう 涼子。順調?』
『うん…でも まだ気持ち悪くて。』
『お母さんも 涼子がお腹にいる時は かき氷ばっかり 食べていたわ。』
『へぇ。これ いつ頃まで 続くの?』
『お母さんは 5ヵ月頃には 落ち着いたけど。産むまで 続く人も いるみたいよ。』
『イヤだ。脅かさないで。』
『水飲んでも 吐いちゃうとか。点滴するほどの人も いるんだから。まだ 涼子は 軽い方じゃないの?』
『そうなのかな。でも 毎日 ムカムカしてるの。食欲ないし。こんなんで 赤ちゃん 大丈夫なのかな?』
『案外 大丈夫なのよ。蓄えた栄養が あるから。それに 赤ちゃんは まだ そんなに 栄養が 必要じゃないでしょう。小さいから。』
『そう言ってもねぇ…子供の 体が弱くなったらとか。色々 考えちゃって…』
『ホルモンのバランスが 不安定だから クヨクヨしちゃうのよね。でも それも 今のうちよ。赤ちゃん 産まれたら 忙しくて クヨクヨしてる暇なんて ないから。』
『お母さんも そうだった?』
『そうよ。かき氷ばっかり 食べてたから。冷え性の子になったら どうしようとか。フフッ。馬鹿みたいでしょう?お腹に入る頃には 氷なんて 溶けちゃうのに。』
『みんな そうなのかな?』
『そうよ。初めての妊娠だもの。何がなんだか わからないじゃない?みんな 不安になるわ。』
母と 話していると 安心するけど。
私は どこかで 自分を責めていた。
私は 罪を犯しているから…
このまま 幸せになれる はずがないって。
そんな夜は 永遠に感じられるくらい
長くて 怖かった。