政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
(でも、それならどうして黙っているの? 詰め寄って嘘を暴いてもよさそうなものなのに)
ついさっき菜摘をじっと見つめた理仁の顔を思い出し、やけに胸が騒ぐ。ふぅと吐いた息はアルコールも含んで熱く、かすかにくらっと目眩を覚えた。
(ちょっと飲み過ぎたから、今日はシャワーだけにしておこう)
さすがにワイン二杯は、菜摘にとって過剰摂取。場の空気が心許なくて、ワインに口をつけるしか逃げ場がなかったのが原因だ。ふわふわとした心地というよりは体がズンと重い。度数の高いお酒を許容量以上に飲んだ後は決まってこうなる。
どことなく危うい足取りでバスルームに入り、熱いシャワーを頭から浴びた。
これからどうしようか。いつ菜摘として理仁の前に現れようか。
頭の中は先行きの不安でいっぱい。
髪を洗いボディーシャンプーを流していると、不意に視界がぐにゃりと歪む。
(……あれ? やだ、なに?)
いきなりフロアが波打ち、菜摘はその場に立っていられずにしゃがみ込んだ。そうしているうちに膝から力が抜けてペタンと座る。
「や、どうしよう……」
次第に目が霞み、シャワーの音がどんどん遠のいていく。左腕にフロアの硬い感触を覚えた次の瞬間、菜摘はそのまま意識を手離した。