政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
◇◇◇◇◇
大地がリビングから去った後もひとりでワインを飲んでいた理仁の元に、美代子が大慌てでやって来た。パタパタというよりはバタバタとスリッパの音が響き渡る。
「理仁様! 理仁様! 大変です!」
いったい何事かとグラスを持ったまま彼女を見上げた。
目は見開き、今にも飛び出しそうなほど。いつも穏やかな美代子が、尋常ではない様子だ。
「そんなに慌ててどうかした?」
「大地様がっ」
「大地くんがなに」
「じょ、じょ、じょ……」
いきなり言葉が不自由になかったかのように美代子が口をパクパクさせる。
「美代子さん、落ち着いて」
そう宥めるが、一向に効き目はない。
「大地くんになにがあった?」
「それがその……突然、女性になられてしまって」