政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

五十代の美代子に菜摘を抱き上げるほどの力はないだろう。でも、自信をもってそう言いきれば、菜摘なら信じるのではないか。


「ですが、どうしてですか?」


美代子は、なぜ隠し通したままにしておくのか疑問らしい。


「彼女自身から正体を明かしてほしいから」


無理に暴いても、彼女の気持ちは定まらないだろう。
ここへ大地として連れ去られたのは事故的状況だとしても、そのまま正体を明かさないのは彼女なりの理由があるだろうから。自分から明かそうと思うまで待ちたい。


「承知いたしました。力持ちの美代子にお任せくださいませ」


美代子はおどけた様子で力こぶを作り、頼もしい笑顔を浮かべた。

(そのかわり、そろそろ手加減は終わりだ。菜摘、容赦しないからな)

理仁は菜摘に「おやすみ」と告げ、部屋を後にした。
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