政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
理仁はそう言って菜摘ににじり寄った。不意打ちで抱きしめられたときと同じ間合いになったが、足がすくんで動けない。
そこでふと思い出す。
「それじゃ、本当は男の人に興味があるっていうのは」
「キミが驚いて白状するんじゃないかと思ってね」
あまりにも真剣な目だったため本気だと思ってしまった。
それが菜摘にとっていいか悪いかはよくわからないが、ホッとして肩から脱力する。
「で、まだ俺の気持ちを疑ってる?」
心の奥を探るように、理仁の目が菜摘を射抜いた。
その眼差しに強さを感じ、身じろぎもできない。
冗談のつもりだったとはいえ菜摘が希望したとおりの豪邸を用意した理仁が、生半可な気持ちで菜摘にプロポーズしたわけでないのはわかる。菜摘の好きなイチゴの形をしたクッションを用意するのもそう。嘘にも付き合ってくれた。
なによりも、佐々良イチゴ農園を救ってくれると言っている。
彼はたぶん、本気で結婚したいと思ってくれているのだろう。