政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

◇◇◇◇◇

翌日の午後、菜摘は和夫が入院する病院へやって来た。いうまでもなく、和夫本人にたしかめるためである。

要塞のような『久城総合病院』をいつものように進み、五階の病室へ急ぐ。
四人部屋の窓際。少しだけ開いたカーテンから顔を覗かせると、和夫はベッドのリクライニングを起こして本を読んでいた。


「おじいちゃん、具合はどう?」
「菜摘」


和夫の顔がパッと明るくなる。名前を呼んだ声は張りが戻り、入院時に比べたらずいぶんと元気になった様子だ。
白髪交じりとはいえ豊富にある髪とピンと伸びた背筋のためか、七十八歳の実年齢よりもうんと若い。もともと覇気があり元気なおかげもあるだろう。

和夫は老眼鏡を外して本と一緒に脇に置き、菜摘は隅に置いてある椅子を引っ張ってきて腰を下ろした。


「農園が大変だって、話してくれればよかったのに」


菜摘がそう口にした途端、和夫の顔が曇る。


「日高さんから聞いたか」
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