政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「取材の帰り?」
「そうなの。青山の隠れた名店の特集を組む予定でね」
「ミレーヌも掲載するの?」
「ミレーヌは隠れてないでしょ」


郁子が破顔する。
たしかにその通りである。ミレーヌはテレビや雑誌で盛んに紹介され、SNSでもおなじみ。
近くで取材していたからこの店を選んだようだ。


「菜摘はもう決めたの?」
「うん。郁子も見てきたら?」
「そうする」


運ばれてきた水をひと口だけ飲み、ショーケースへ向かう。こういうときに迷わずスパッと決めるのが郁子。ものの十数秒で戻ってきた。


「よく迷わないね」
「インスピレーションでこれって決めちゃうから。迷う時間がもったいない」


理仁にプロポーズされたときに即賛成したのも同じような理由だろう。いつも悩んで惑って、なかなか決まらない菜摘には羨ましい決断力だ。
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