政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
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約束の午後二時、ミレーヌの専務は時間きっかりに高級車でやって来た。ピカピカに磨き上げられた真っ黒な車体が目にも眩しい。
後部座席から降り立ち、男性秘書をうしろに従えた彼の姿をひと目見た菜摘は息を飲んだ。ハウスが何棟も建ち並ぶ農園には不釣り合いな、美麗な男だったのだ。
専務という肩書から勝手に五十代の男性を想像していたため、そのギャップに戸惑う。
スラッとした体躯に上質なネイビーのスーツ。理知的な笑みを浮かべた顔は、おとぎ話に出てくる王子様のよう。畑が一瞬にして西洋のお城の風景に変わる。
思わず出迎えの言葉をかけるのも忘れてその姿に見惚れていたら、理仁に先を越されてしまった。
「ミレーヌの日高理仁です」
流れるような動作で名刺を取り出し、菜摘に差し出す。
(そういえばおじいちゃんが、社長の息子だと言っていたっけ)
農園の説明をしなくてはならないとテンパっていたため、その情報をすっかり忘れていた。