政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「は、はじめまして。佐々良菜摘と申します」
ぎこちなく頭を下げると、理仁からクスッという笑みが漏れ聞こえた。容姿端麗ぶりに見惚れていたのが、きっとバレたのだろう。ものすごく恥ずかしい。
「私、名刺は持っていなくて」
カーゴパンツやワークエプロンのポケットを探る真似をするが、当然ながら名刺代わりになるようなものはない。
「気にしなくていいよ。菜の花の〝菜〟に花を〝摘む〟で菜摘さん、だよね」
「祖父からお聞きになったんですね」
和夫は、案内できない自分に代わって菜摘が対応するのを事前に報告していたのだろう。年上だから余裕があって当然とはいえ、オロオロする菜摘と対照的に落ち着き払った様子はまさに大人の男性だ。
その彼がなぜかしばらく菜摘をじっと見つめたため、妙な間が生まれる。
(どうしたのかな……?)
まばたきするのも躊躇うほど、真っすぐな眼差しだった。数秒間の沈黙の後、思い出したかのように彼の手がハウスの方に向く。