政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「バス会社の合同葬儀があったのを覚えてる?」
「薄っすらとなら」
「そこで菜摘と初めて会った」
「えっ、あのときに?」
十四年前の事故で一緒に両親を亡くしたうえ、理仁と会っていたとは。
「ひとり立ち尽くして泣いていた俺に、菜摘がハンカチをそっと差し出してくれたんだ。俺より幼いのに、泣きじゃくる弟の手をぎゅっと握って、自分は涙を堪えて」
十四年前だから理仁は十八歳。高校生くらいの男の人にハンカチを手渡した記憶はまったくない。
「ごめんなさい。私覚えてなくて」
「無理もないよ。菜摘はまだ十三歳だろう? 辛いことはできるだけ忘れた方がいい」
当時の記憶は断片的で、覚えているものも曖昧になっている。強烈に残っているのが、泣いている大地の手を握ったときの感触。弟は絶対に守ると強く誓った決意だ。
「あのときの菜摘の目が鮮烈に残っていてね。あの子もどこかでがんばってるだろうから、俺もがんばろうっていつも思ってた」