政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
新幹線も飛行機も、チケットが取れなかったため高速バスに乗車して事故に巻き込まれたのだ。
その事故では菜摘たちのように両親を亡くした子どもがいたらしく、ふたりよりもっと幼い子で身を寄せる先がなくて施設に入った話も聞いた。
それを考えれば自分たちは幸せだろうと思う。
「菜摘さんは本当に強いね」
「そんなことはないです。弟も一緒だったので」
当時、大地はまだ八歳だった。泣きじゃくる大地を前にしてメソメソしている場合じゃなかっただけだ。自分がしっかりしなくちゃと。
「どうしておじい様のイチゴ農園を一緒にやろうと思ったの?」
「最初は義務感でした。でも手伝っているうちにおもしろくなって。前の年よりも甘くておいしいイチゴができるとうれしかったんです」
「大学でも学んだそうだね」
そんなことまで知っているのかと、菜摘は目を見開いた。
「おじい様がうれしそうに話していたよ」
「そうでしたか」
和夫が、そんな話をしているとは思いもしなかった。