政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

「こんなにすごいお料理は初めてです」


外食するにしても蕎麦屋やファミレスがいいところ。ホテルで食べる機会なんてなかった。


「喜んでもらえてなにより」
「私、両親を亡くしているんです」


必要もないのに、なぜかそんな打ち明け話をポロッと口にする。ほかに話題を見つけられなかったせいにほかならない。もっと違った話をすればいいのに、なぜかそんな話になってしまった。

理仁は食べている手を止め、菜摘を見つめた。


「私が中学生のときに交通事故で。だから、こんなふうに豪華な料理をホテルで食べるなんてありませんでした」
「それは大変だったろうね」


いいえと首を横に振る。


「すぐに父方の祖父母のもとに引き取られたので」


幼い頃からかわいがってくれていた祖父母のもとで暮らせたのは不幸中の幸いと言える。

菜摘の両親は、高速道路を走行中の大型バスの交通事故で亡くなった。親戚に不幸があり、両親揃って葬儀に参列した帰りの出来事だった。
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