紅に染まる〜Lies or truth〜
真実



「ベッドの寝心地悪っ」


仕事部屋のベッドに寝るつもりが
マットの所為なのか何度も目が覚める

やっぱ寝室で寝ようと
携帯を持って仕事部屋を出る

リリリリリ


「・・・っ」


本来鳴らないメロディが
シンとした家に響いた


「・・・チッ」


画面を見なくても相手は決まっている
二ノ組を受けた時点で拒否することは許されない人物


【大澤碧斗】
嫌がる指が動いた


「もしもし」

(降りてこい)

「五分だけ待って」

(それ以上は待てねぇ)


寝室へ向けていた足を変更した

手早く顔を洗って歯磨きをする

走って着替えを済ませると
エレベーターに乗った


エントランスへ出ると
バトラーが駆け寄る


「愛様」


哀しい顔をなるべく見ないようにして
入り口を出ると

フルスモークのセダンが停まっていた

ゆっくり近づくも・・・
誰も降りて来ない

そうなるとどこに乗っていいか分からない

そう考えていた目の前で
助手席の窓が開いた


「・・・っ!」


「乗れ」


驚き過ぎて声が出ず
言われるがままに助手席に乗り込んだ


「驚いたって顔だな」


「はい」


「心配するな免許は持ってる」


いやいや、重要なのはそこじゃない
そんな小さなツッコミを心の中で入れて

シートベルトを締めた


「眠いか?」


運転席の組長は運転しながら
何度も私のことを気にかける


・・・こんな人だった?


絡んだことは少ないけれど
いつも私には優しい組長

でも・・・

纏う雰囲気が前よりずっと
柔らかくなった
そんな風に思った


‘溺愛する姫’のお陰かな


借金のカタにした私より一つ上の無垢な女を思い出した
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