紅に染まる〜Lies or truth〜




「お腹減ってないか?」


「大丈夫」


車についた時計は0:00を過ぎたところ

こんな時間にお腹なんて空いてるはずがない
それに食べちゃいけない時間だ!
仮にも私は女子高生なんだから


いつもと違う組長に
心の中で何度もツッコミを入れる


そんな変な空間の中で
実は組長の策にハマっていたとは
気づきもしなかった




護衛も無しで迎えに来た組長のことを
会話の合間に考えていた


多分・・・兄のこと


それ以外に禁じ手を犯して組長一人で出張るなんて有り得ない

そこまでするのは兄との信頼関係

それなら説き伏せられるのは私の方

どんどん想像を膨らませる私に


「愛が今考えていることは全部違ってる」


頭を撫でた組長は
私の考えを見透かしたように笑った


「さぁ、降りるぞ」


「・・・え?」


考え事をし過ぎて周りの景色を見ていなかった

組長に促されて降りた先に見えたのは
龍神会会長の屋敷だった



「「「お帰りなさいやしっ」」」



こんな夜中に一糸乱れず並んでお辞儀をする組員

地を這うような声は
かなり離れているとはいえ
迷惑にならないだろうか

ボンヤリと考えていた私の手を
サッと引いて


「行くぞ」


頬を緩めた組長

その光景をジッと見つめる組員達の視線から逃れるように

少し組長の後ろに隠れ気味で歩いた





< 130 / 227 >

この作品をシェア

pagetop