紅に染まる〜Lies or truth〜



「もし・・・」


「ん?」


「いや・・・もしは、ないな」


「は?」



言いかけてやめて
ニッコリ笑った紅太は


「じゃあな、二ノ組田嶋愛」


サッと拘束を解いて
手を引いて起こしてくれると
顔にかかったサイドの髪をひと掬い手に取ると口付けた


「・・・」


「髪、そのままでいろよ」


今時珍しい黒髪ストレート

それを指で挟みスッとスライドさせると

頬に手を当て
「じゃあな」ともう一度
視線を合わせる


「うん」


頭をくしゃくしゃに撫でながら笑う紅太を見上げると耳のピアスが目に入った


・・・これ


その赤に触れたくて手を伸ばすと
サッとその手を掴まれた


「どうした」


・・・そうだ、これに触れたくて


手を伸ばした先の赤を思い出した


「愛?」


「・・・コータ」


合わせた視線が揺らぐのが見えた


「チッ、思い出すの遅せぇぞ」


口元を緩めて笑う紅太の表情は
胸が締め付けられる程悲しい笑顔だった

だからと言って
想いが交差することはない

それがわかった以上
期待を持たせるような残酷なことはしない


「南の潜入、よろしくね」


「チッ」


「あの子達のこと、よろしくね」


想い出に触れることもなく
ただ淡々と言葉を並べる私に

降参とばかり両手を上げて


「じゃあな」


背中を向けた


「・・・っ!」


見送る視線の先に

静かにこちらを見ている兄がいた
















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