紅に染まる〜Lies or truth〜



兄に気づいて一瞬足を止めた紅太も
またゆっくり歩き始める

それに合わせるように距離を詰める兄

やがて
それが交差する直前に立ち止まった二人


「謝りませんよ」


「あぁ、次はねぇ」


静かな睨み合いは一瞬で解けた

そのまま真っ直ぐ近づいた兄


「愛」


探るような瞳は揺らいだまま
伸ばされた腕の中へ閉じ込められた

スーと息を吸い込むと
大好きなグリーンの匂いに肩の力が抜けた


「すまない、愛」


切ない声を聞くだけで
胸の辺りがギュッと押しつぶされそうになって
しがみつくように背中に手を回した


「・・・ドライブするか」


いつものように甘く優しい声に
コクコクと頷いてみる

車の中が一番話をしやすいかもしれない


さぁと腕の中から解放されると

一度視線を合わせた兄の瞳がスッと細められた


「・・・チッ」


イキナリの舌打ちに頭が追いつかない


「紅太、許さねぇ」


兄の指が唇に触れて
輪郭をなぞるように動く


・・・あっ


いつだったか颯が気づいたのと同じかもしれない

誤魔化すように苛つく兄の眉間に手を伸ばすと指でなぞってみた


「行こう」


少し緩む兄の頬を確認しながら手を繋いだ


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