紅に染まる〜Lies or truth〜
距離


「だから?」


「考えてみろ、愛は不自由を当たり前の生活として17年生きてきた・・・一平さんはそこから逃げ出した人間。愛にとって一平さんは自由の象徴だ!その一平さんに‘自由にしてやりたい’なんて言われたら錯覚するだろ」


「錯覚?」


「そうだ、錯覚!
それは自由でも愛情でもない
ただの錯覚だ!」


尋の言葉が頭に入ってこない
そんな様子を見ながら尋は
目を逸らさず語り続ける


「愛は今までの生活を不自由だと思ってきたのか?
街を動かせる力のことを誇りに思ってきたんじゃないのか?
他の誰にも真似できない力を不自由だと切り捨てられるのか?」


尋の言葉が心に刺さる

それは

至極真っ当な意見で



そうだ・・・
確かに子供の頃から徹底的に裏の仕事を叩き込まれてきた

裏の家業を知ると離れていった友達

それは二ノ組を辞めても戻らない

どこへ出掛けるのも護衛がつく

それも・・・変わらない

一平の言うようにニノ組を返上して
守られる姫になったとしたら・・・

一平の帰りを待つだけの人形に成り下がるということ


「西の繁華街で女の腰を抱く一平を見かけた」


「ん?・・・それで?」


「嫌だった」


「なんで?」 


「一平は私のだから・・・そう思った」


「私の・・・か」
 

「うん」


「兄妹じゃないと分かってどう思った?」


「・・・捨てられると思った」


「仕方ないな、愛には一平さんしか居なかったからな」


どういうことだろう



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