紅に染まる〜Lies or truth〜

程なくして大きな駅と直結したショッピングモールに着くと

前後に海輝と圭介
左右に双子という四方を囲まれて歩く

籠から出るはずが守られ過ぎじゃない?
そう思いながらも沢山の客で溢れている場所が初めてで妙に落ち着かない

私達が動くだけで周りの視線を釘付けにする

こんな風に買い物したことがなくて
どうすればいいのか分からず

歩く速度が弱まった


「どうした?」


少しの変化に気づく尋


「ううん」


曖昧な返事しかできず


「エル、順番に買うか」


巧が助け船を出してくれた


「買い物・・・したことないから
どうしていいかわからない」


俯く私の頭を撫でる大きな手に
頭を上げると

眉毛を下げた尋と目が合った


「エル?これが普通だ、自分で歩いて欲しい物を買う」

「うん」


普通・・・当たり前のことを
自然に出来るようになれるかどうか
今は考えても無理

とりあえず、機会を与えてくれた
南の街で少し変われれば良いと

頭で考えないように

自分の五感を信じながら

広いモールを見渡した








「・・・っ!」





視線の先に大澤紅太が居た


「おい!アレ」


先頭に立つ海輝も直ぐに気づいた


「チッ」


隣の尋から殺気が上がる


「尋?」


「巧、エルを任せた」


繋いでいた手を離すと
紅太の元へ近づいて行った尋


「巧?」


「エルは心配しなくてい〜よ」


いつもの軽い感じの巧は
クルッと方向転換すると

尋と紅太に背を向けて
別のフロアへと私を連れ出した






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