紅に染まる〜Lies or truth〜
説明できない感情



「・・・じ、ん」


「うん」



頬に触れている尋の肌が
温かくて心地良い


何も聞かずに待ってくれていることも

ずっと撫でてくれる大きな手も

なんだかホッとして

それでも
ダラリと下げていた腕を
尋の背中に回すことはしない


密着する尋の温かさに
少しずつ気持ちが凪いでくる


ポロポロと溢れる涙は
尋の背中を見て一平を思い出したからなのか


元々、波長の合う双子だけど
尋はいつも寄り添ってくれる分
一緒に居て落ち着く

負けず嫌いの性格を
理解して躱してくれる器の大きさも


それに繋がっているのだと思う


「風邪ひくといけねぇ」


「うん」



情緒不安定は私かもしれない


自分を見つめ直す機会は
こんなにも感情を揺らすものなのか

間近で見上げると
口元を緩めた尋が頭を撫でた


濡れた髪と彫刻のような引き締まった身体が艶っぽくて

条件反射のように顔に熱が集まる


「深く考えんな」


そう言ってもう一度頭を撫でた大きな手はそのまま肩を引き寄せて

ピッタリ寄り添ったまま
部屋の中へと入った


部屋の明るさに目を細めると


「今夜はゆっくり寝ろよ」


寝室のドアを開けた


「尋はどこで寝るの?」


「愛と一緒」


頭を過ぎった‘ウソ’って声は
唇を割ることはなかった












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