紅に染まる〜Lies or truth〜



「愛、夕陽が綺麗だぞ」



バルコニーに出ていた一平から声がかかる


上半身裸で手摺に寄りかかる一平は
背中に夕陽を背負っていた


ゆっくり近づいて隣に立つと抱きついた


「愛」


甘くて低い声に顔を上げると
微笑みながら頭を撫でられる

そうやって何もせず
同じ空間に居ることが
心を穏やかにする



「キャッ」


急に抱き上げられたから驚いて一平にしがみ付く


そのまま移動しソファに腰掛けた


首元に顔を埋めた一平の息で
なんだかこそばゆい


「どうしたの?」


「愛、このまま聞いてくれ」


「うん」


「俺たちのことを親父に話した」


「・・・っ」


「俺の気持ちも、愛の想いも
これからのことも・・・全部」


「・・・そっか
パパ、なんて?」


「いつでも俺たちの味方だって」


反対されるかもと力の入った肩が下がった


「だから」と区切った一平は


「結婚しよう」
驚愕の一言を投下した


「・・・え」



そう言って身体を離した一平は
膝の上に私を乗せたままテーブルの上へ手を伸ばした

そしてその手が掴んでいた物に息を飲んだ



「婚姻届?」


「あぁ、親父の許可をもらってきた」


“妻”の欄以外は全て記入済みのそれから目が離せない


「愛は未成年者だから親父の許可がいる」


いつか・・・なんて
先の話じゃなくて
直ぐにでも提出する勢いのようだ









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