紅に染まる〜Lies or truth〜





後になって知ったのは・・・



愛に無視されるようになった頃
田嶋の家では愛を後継者として

陰の仕事を叩き込むようになったこと

漸く掛け算を覚えた頃に
別次元の世界を詰め込まれる

それがどんなに苦痛で孤独だったか

俺がそれに気づいたのは

愛が携帯とタブレットを操作する指の動き

スーーッと流れるような指運びが
親父の動きと酷似していた

勿論、親父に問い詰めると
「それがどうした」と激昂した

ニノ組の仕事を放り出した
愚息に今更口を挟む権利はない

それが親父の答えだった



そこから


己の贖罪のために

俺の手の内に居る時だけはと
持てる愛情の全てを愛に注いだ

最初は恐る恐るだった愛の態度も


『今日は愛とずっといるよ』


そんな至極簡単な言葉で
家業の呪縛から解き放たれた


せめて年相応の楽しみを与えたい

ただその一心だった


いつまでも可愛いがっていた愛が
完璧に闇に落ちたのは中学を卒業する頃

表の稼業で業績を伸ばす親父は
陰の家業を全て愛一人に任せた

だから

龍神会で必要な情報は全て愛に取り次がれる

勿論、それによって狙われる危険も上がる

それを想定していたかのように
鉄壁のガードを固めた要塞を造った親父は

高校へ上がると同時に愛をそこへ隠した

仕事の時の名前は愛《まな》

そうやって至極簡単な操作で
愛娘を闇に落とした









































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