紅に染まる〜Lies or truth〜


東の街を仕切る【白夜会】

不可侵領域



その白夜会の一ノ組 堂本組
若頭 堂本理樹《どうもとりき》から
面白い情報が入った

組内での動きが忙しくて
時間が取れたのは午前3時過ぎ


境界線近くのクラブで聞いたのは
西側の人間が作った借金の話

理樹の側近が広げた情報に
碧斗の表情が僅かに変化した

側近である俺以外気づかないレベルのそれは

碧斗の人生を変えることになる




中学の頃から面識のあったこの二人
四年前の理樹の結婚披露にも出席する仲で

碧斗の好みまで熟知している理樹が仕掛けた話に

碧斗は簡単に乗った

少し焦って視線を向ければ
目が合った瞬間
「大丈夫だ」と声が降った気がした

3億円の借金を1億で買い取る
それを・・・
碧斗は半値に叩いて手打ちにした

全ての情報を手にすると

部屋の空気が変わった


「一平」


碧斗の低い声に応えるように
車に戻って愛に電話を入れた

この1ヶ月余り
愛を動かしてばかりの自分を思い出して
苦い想いが胸を渦巻く

ここに来る前にも
報告を受けたばかり

寝ているに違いない愛

本当は寝かせてやりたい気持ちを
奮い立たせるように
耳を支配する電子音を聞き流した


何度も何度も繰り返すコール音
やっとそれが止まった


(‥‥もしもし)
眠そうな声に胸が傷む

「マナ」
仕事の名前を呼んだ途端


(チッ)
怒りを孕んだ舌打ちが聞こえた










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