紅に染まる〜Lies or truth〜



「知らない」


「愛様が引っ越される3ヶ月程前に・・・」


説明する三崎の声を流しながら

ポケットに入れた指を動かす

弾き出されたデータが
内耳に着けたスピーカーから
暗号化されて届く
 

・・・嘘つきだね


正確には芝浦尚也は
南の街の窓口になっている男

こんな男が父の配下にいる?

何が起こっている?

私が呼ばれた訳と直結しているようで胸の奥が騒つく

・・・とりあえず

こちらの動きをキャッチされないように
感情を殺すことにする


「愛、大丈夫か?」


「ん?」


繋いだ手にギュッと力を込めた颯は


「大丈夫なら良い」


シルバーグレーの瞳で顔を覗き込むとニッコリと笑った


・・・犬並みの五感、クスッ


少しの変化に気づいた颯に
少し乱された感情を

深い深呼吸で消した時


「着きました」


久しぶりに見る実家が姿を現した

三崎の電話で
重厚な門が開けられると
ゆっくりとその中へ滑り込んだ

バタバタと黒服が車を取り囲み
外からドアが開くと同時に


「「「お帰りなさいやし」」」


地を這うような低い声が響いた


まだこんな時代遅れの出迎えやっているのかとため息をつくと


颯は躊躇うことなく一番に降りた
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