紅に染まる〜Lies or truth〜



髪を乾かし終えると


「何も食べてないだろ?」


手櫛で髪を梳かしながら
兄が甘い顔をする

あの宴会を放置で帰ってきたから
実はペコペコだったりする

それを見越しての兄の先手


「天井に頼んだから」


「ありがと」
いつになく素直に


モコモコの部屋着のまま
兄と手を繋いでエレベーターに乗った


「三崎の部屋は天井と颯で使う」


聞こうと思っていたことを
心の声が聞こえたように答える

颯の護衛は解除かと思ったのに
当てが外れた


「傷だらけで役に立たないじゃん」


どんな護衛が着こうとも
負ける気もしないけれど

足手まといは困る

そんな私の杞憂は

和食が並ぶテーブルに着いた時に消えた


「天井は俺の側近だった」


簡単に言ってのけた兄


「・・・は?」


「申し訳ありません、愛様」


いつも通り・・・じゃなく
彫刻にピッタリな隙のない挨拶をする天井さん


・・・調べてなかったな


まだまだ甘い自分を少し笑って


「いただきます」


箸を持った


「食べながら聞いてほしい」


これからのことを話し始めた兄


「龍神会が代替わりする」


まるで自分がそうさせるような口振りに意地悪心が芽生える


「する?させるじゃなくて?」


代替わりさせるのは私、一平でも大澤碧斗でもない
そこを理解させる


「あ、あぁ、そうだ」


「じゃあ〜」
お願いしてよと続けようとした口を


「愛っ!」
兄の大きな声が邪魔をした







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