紅に染まる〜Lies or truth〜

颯は入院を言い渡され
納得いかないようだったけれど
強制的に連れて行かれた


「愛、帰るぞ」


兄の差し出した手を握って
病院を後にした


「愛はどこで寝たい?」


「今夜も一緒に居てくれるの?」


「あぁ」


そう言って頭を撫でてくれる兄


「とりあえず状勢を動かしたいから私の家」


「わかった」


地下に車を止めると
兄はバトラーと護衛に話があると
エントランスのエレベーターホールで別れた

最上階の部屋に戻ると一番にお風呂のスイッチを押した


「一平・・・まだかな」


三崎が戻ることが無くなった今
護衛も役割を変えることになる

バトラーも田嶋の組員であることに変わりはなく

敵が入れ替わることを
周知していくことになる

しばらくは兄を待っていたけれど
肌の気持ち悪さに負けて

玄関の鍵を開けたまま
シャワーを浴びた







タオルを頭に巻いたまま
リビングの扉を開くと


「不用心だな」


ソファに座る兄がいた


「この部屋の鍵持ってたっけ?」


「いや」


「じゃあ仕方ない」


そう言いながら近づくと
ここに座れといわんばかりに
脚の間をトントンと叩いた


「乾かしてやる」


いつの間に用意したのか
兄の手にはドライヤーが握られていて

大人しく両脚の間に座った



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