紅に染まる〜Lies or truth〜



「何個買ったの?」


「30個にしました」


10名程の所帯だから充分だろうし
甘党だったと思い出して笑った

ルームミラー越しに驚いた顔をした天井さん


「なに?」


「い、え、愛様最近よく笑われるようになったかと・・・」


後ろ髪に触れながら恐縮して話す様子を見ながら

そういえば最近よく笑ってると
自分でも気づいた


「変?」


「いえ、可愛らしくて俺も釣られます」


耳まで染めた天井さんを見つめる

‘可愛い’と言われすぎて
最近麻痺してきたかなとまた乾いた笑いが出た

郊外の住宅地の外れにある、
武家屋敷風の邸宅に到着すると

黒尽くめの集団に囲まれた



「「お帰りなさいやし」」  



なにかの訓練か?
ここ家じゃないし・・・

突撃の出迎えに物々文句を並べて
先導する道端照史《みちばたあきと》に続いた


「姫ちゃん!よう来たよう来た」


「姫ちゃん!いらっしゃ〜い」


玄関で出迎えたのは
龍神会一ノ組先先代組長で現在龍神会会長である大澤翠龍《おおさわすいりゅう》さんに

その奥さんの橙美《とうみ》さん


「こんにちは」


この時ばかりは普段慣れない
ワントーン高い声を出す

もちろん笑顔も忘れず


「お土産です」


控えていた天井さんがケーキの箱を差し出すと


「まぁありがとう、さぁ上がって」


橙美さんが喜んで道端さんが受け取った




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