紅に染まる〜Lies or truth〜
疑惑

恐ろしく退屈なパーティを終えると
酔っ払い達の見送りの前にお手洗いへと席を外した

会場のある階は広い廊下やホールに隙間なく警備の為の組員が配置され威圧的な雰囲気を出している

着物の所為で歩幅が狭い私は
早く通り抜けたい気分を抑えながら歩いた


「フゥ」


パウダールームを備えたその場所には先客はなくて肩の力が抜ける


・・・苦手


表に出ると言ったものの年功序列ではない縦社会
様々な思惑が入り混じる目を向けられる状況に白旗を掲げそうな気分

お手洗いを済ませて
パウダールームに移るつもりが

耳に入った聞き覚えのある声に足を止めた


・・・橙美さん


「でも凄いわね愛さん」


「そうでしょ?可愛い姫ちゃんなの」


「若頭の腕の中で守られて」


「一平と姫ちゃんは仲良しね」


「そろそろ結婚かしら?」


「結婚?そうね」


「お似合いだものあの二人」


「そうでしょ」



・・・??


話の内容はすぐに別のものに変わったけれど
二人のやり取りが頭の中を占めて息苦しい


・・・お似合い?


・・・結婚?


溺愛とはよく言われるから
そうだと思っていたけれど

兄妹なのにあの会話はおかしい

ホテル到着の一件なんて
頭から綺麗に削げ落ちてしまうほど

混乱した状態のまま
逃げるようにその場を離れると

見送りの金屏風前に戻った









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