紅に染まる〜Lies or truth〜




「・・・ん」


ゆっくり目を開けると
グリーンの香りに包まれていた


お手洗いの後の記憶が曖昧で
途切れ途切れの絵だけしか頭に残っていない


「起きたのか」


耳元で聞こえた声に


「うん」


「身体大丈夫か?」


「うん」


「もう少し寝ろ」


「・・・」


身体はこのまま眠ってしまいたい
けど・・・頭がそれを望んでいない


「帰る」


「ん?」


「帰る」


「あぁ」


言い出したら聞かない私を知る兄は
諦めたようにオデコに口付けると立ち上がった


「着替えは用意させた」


壁に下がるワンピースと
小さな紙袋は下着だろうか


「ありがと」


そのまま受け取ると


「顔洗ってくる」


黒で統一された寝室を出た






歯を磨きながら籠に入っている服を見ていた

記憶は曖昧だけど
兄に抱き上げられて
湯船に浸かっていたはず


・・・兄妹?


少なくとも私は昨日まではそう思ってきた


・・・ほんとは違う?


二人のこれまでを否定されたようで
足に踏ん張りがきかない


「・・・ぺい、う・・・一平っ」


叫ぶように呼ぶ私に気づいた兄は
焦った顔をしてしゃがみこむ私を抱き上げた


「どうした愛」


そのままソファに座った兄に
隙間なく抱き着く


「愛?」


何も言わないままの私に
変わらず接してくれる兄


この時の私は兄妹じゃないことが
二人を引き裂くような気がして




遠くなる意識の中で
ただ兄に縋り付いていた




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