紅に染まる〜Lies or truth〜
橙美さんと誰かの会話を聞いた日
いつになく上機嫌な兄と
不安しかない不自然な私は
お互いの存在を確かめ合うみたいに
寄り添って過ごした
。
翌日、組長からの呼び出しに渋りながらも出かけた兄
兄の帰りを待っていようと思っていたのに
やっぱり胸のモヤを晴らしたくて
要塞に戻ることにした
ずっと張り付く颯に
「自分の部屋に居て」
最上階へのエレベーターには乗せなかった
納得していない目を向けた颯も
いつもと様子の違う私に気づいたのか
「またな」
最後は簡単に背を向けた
最上階で開いた扉から
ゆっくり降りた途端に
身体が震えてくる
怖いものなんて一つもなかったのに
昨日から恐怖しか感じていない
震える身体を押さえながら
中へ入ると
玄関の予備鍵までかけて
仕事部屋に入った
「ハァ」と長い息を吐き出して
椅子に座ると
キーボードに両手を乗せた
一番端のモニターに留守の記録が並んでいて
三番目のモニターにはリマインダーをかけた‘大澤紅太’が映っていた
・・・どうでもいい
力無くそれらのモニター電源だけを落とすと
正面のモニターを見据えた