私は、この人の妻?
8話

···帰らぬ人・嘆き


私のお腹が、
9ヶ月を過ぎた時に
佳寿ちゃんは帰らぬ人となった。

海斗さんの憔悴ぶりは酷く
私とおばあ様で
お通夜、お葬式を進めて行った。

保育園の先生をはじめ
海斗さんの会社の方々が
次々に見えた。

打ちひしがれる海斗さんに代わり
私は次々に見える
先生方や会社の方に挨拶をする。

佳寿ちゃんの裁縫の関係者は、
おばあ様が対応してくれた。

私の両親は、裏方に徹してくれて
全てを回してくれていた。

おばあ様の悲しみも
計り知れないが
佳寿ちゃんの為に気丈に
振る舞ってくれていた。

お客様が引いた時に
お手洗いに立つと
海斗さんが座っていた場所にいなかった。

お手洗いかなと思い
後で少しでも食事を取らせなければ
と考えながら
お手洗いに行き
海斗さんを探していると

話し声が·····

······海斗·····さん·····?····

「大丈夫か?」
と、男性が訊ねたが声は聞こえない

あー、海斗さんの会社の方か
と、思いそばに行こうと
扉を少し開けた時·····

「ううっ·····う·····っ····」
と、海斗さんの泣き声
と、同時に
「海斗」
と、男性が海斗さんを抱き締めた。
海斗さんも男性を抱き締め返す。

えっ、ええっ···と思っていると····

「海斗、愛してる。
おばあ様は、亡くなられたんだ。
無理して一緒にいる必要ないだろ
海斗を癒せるのは
長く一緒にいた俺だけだよ。
ずっと、我慢してきた
海斗が女の元にいることを。
あんなに愛しあっていたのに。
もう、自分を解放して
俺の元に戻ってきて。」
と、言いながら
海斗さんの涙を拭き
海斗さんにキスをする
海斗さんもそのままを
受け入れていた。

私は、扉をそのままにして
その場を離れた。

おばあ様は、そんな私に
「どうしたの?穂乃華。
顔が真っ青よ。
きついんじゃないの?」
「そうかもしれません。
少し休んでも良いですか?」
と、言うと
「奥に部屋があったから」
と、言われたが
その部屋に海斗さん達がいたから
「いいえ、外に出て風に当ってきます。」
と、おばあ様に伝えて
裏口から外に出た。

涙が溢れて止まらなかった

恋人が男性だったから·····

私を·····りよ···う···し···た····

愛してる····も····嘘っ·····

なんて····こと·····

悲しみで胸が張り裂けそうだった。

私は、美穂先生に直ぐに連絡をした。
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