真夜中だけの、秘密のキス
*
椿高校の黒いブレザーに身を包み、鏡で全身を確認する。
襟に縁取られた赤いパイピング、それから赤いラインの混ざったチェックのスカートがお気に入りだ。
癖のあるキャラメル色のロングヘアをブラシでとかし、彼のことを思い浮かべる。
今日も目が合ったら嬉しいな。
それだけで一日中幸せな気分を維持できる。
*
学校までは徒歩で20分弱。
近いからこの学校を選んだというのもあるけど。
決め手は、好きな人が椿高校に入るという情報を得たから。
家の近くの交差点を曲がったとき、見覚えのある後ろ姿を発見する。
癖のないグレージュの髪が、日の光に反射して綺麗。
「おはよう、久木《ひさぎ》君」
思い切って声をかけると、彼が緩慢な動作で振り向いた。
「……はよ」
あくびでもしそうなくらい、気だるげな雰囲気。
それでも返事をしてくれたのが嬉しい。
中学のときは、ただ見ているだけで何も行動はしなかった。
それを今も後悔していて、できるだけこうして接点をもつようにしている。
……鬱陶しく思われない程度に。
「あのね、久木君」
「……何?」
椿高校の黒いブレザーに身を包み、鏡で全身を確認する。
襟に縁取られた赤いパイピング、それから赤いラインの混ざったチェックのスカートがお気に入りだ。
癖のあるキャラメル色のロングヘアをブラシでとかし、彼のことを思い浮かべる。
今日も目が合ったら嬉しいな。
それだけで一日中幸せな気分を維持できる。
*
学校までは徒歩で20分弱。
近いからこの学校を選んだというのもあるけど。
決め手は、好きな人が椿高校に入るという情報を得たから。
家の近くの交差点を曲がったとき、見覚えのある後ろ姿を発見する。
癖のないグレージュの髪が、日の光に反射して綺麗。
「おはよう、久木《ひさぎ》君」
思い切って声をかけると、彼が緩慢な動作で振り向いた。
「……はよ」
あくびでもしそうなくらい、気だるげな雰囲気。
それでも返事をしてくれたのが嬉しい。
中学のときは、ただ見ているだけで何も行動はしなかった。
それを今も後悔していて、できるだけこうして接点をもつようにしている。
……鬱陶しく思われない程度に。
「あのね、久木君」
「……何?」