黒王子の溺愛
「あの人、愛想ないからなあ。パーソナルなことは、無理だけど、それ以外で、俺が答えられることは、答えてあげる。」

一瞬、聞きたい!と思ってしまった美桜だが、ゆっくり首を横に振った。

「やっぱり、直接聞きます。後で知ったら、きっと気分良くないもの。」
「美桜ちゃん、可愛くて、料理も上手で、しかも性格もいい。いい子だね。柾兄、羨ましいなあ。こんな子と婚約、なんて。」

「あ、でも教えてほしいこと、ありました!」
ぽん!と美桜が手を叩く。
「ん?なになに?」

美桜が颯樹に聞いたのは…、品揃えのいいスーパーの場所だった。

颯樹が、案内がてらに、とついてきてくれる。
「柾兄にだよね?」

「はい!それはもちろん。」
「今日の夜?」
「はい。時間あるし、調理器具もいろいろ揃ってました。」

颯樹は一緒にスーパーの中に入って、カートを押してくれた。
話しながら、そのカートに、美桜は食材を入れてゆく。

「あー、休みの日とかは、料理したりもするからね。柾兄は。」
「そうなんですか?」

料理をする、と聞いて、美桜はきょとん、と、してしまった。
柾樹と料理のイメージが、あまりにも繋がらなさ過ぎる。

「うん。でも調理ってより、化学実験みたいな顔して、料理作るから、怖くてさ。」
柾樹が真面目な顔で、実験するように、料理をする様を想像すると、美桜はつい、笑ってしまった。

そう言えば、身体を辿る時も、まるでひとつひとつを確認するかのように触れていた。

そういう、性格なのかもしれない。
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