黒王子の溺愛
食材を載せたカートを見ながら、美桜はポツン、と呟いた。

「ビーフシチュー、お好きだといいんですけど。」
「男は好きだよ肉料理。てか、俺が食べたい。」

「余分に作りますか？」
「マジで？」

シチューならば、一人分増えたところで、そう大した手間にはならない。
そう思って、言った美桜に、颯樹は嬉しそうな笑顔を向ける。

「二人分も三人分も変わりませんもの。」
「うっわー、じゃ、いい肉買おう。俺、奢るから。」

喜ぶ颯樹を見て、美桜も笑顔になった。

2人で買い物をして、マンションに帰る。
いつも、笑顔でにこにこしていて、明るい颯樹と一緒に過ごして、少しづつ、気持ちが晴れてきた美桜だ。

買い物した荷物を持って、部屋まで入れてくれた颯樹は、玄関で、自分の荷物を持った。

「俺、このまま会社に行くけど、大丈夫？」

──時間のない中、付き合ってくれたんだ。
そう思って美桜は、頭を下げる。

「ありがとうございました。大丈夫です。えっと、シチュー…どうしますか？」

「明日、今日くらいの時間に寄ります。柾兄に、よろしく言っといて。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」

颯樹は一瞬、目を見開く。
くすっと笑って、
「はい。行ってきます。」と笑顔になった。
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