黒王子の溺愛
──し、心配?

嫌われている…のではないのだろうか。

柾樹は、美桜の指先を握ったまま、いろんな角度で見ているので、美桜はだんだん恥ずかしくなってきてしまった。

「あ…の、そんなに、見ないで…下さい…。」
「君は…どこもかしこも白くて…、小さくて…、綺麗なんだな…。」

指先に軽くキスをされて、やっと解放されたのだが、美桜は胸の高鳴りが止まらない。

柾樹の綺麗な唇が、大事なものに触れるように、そっと指に触れたから。

その柾樹の唇の触れたところが、まるで熱を持ったようにドキドキする。

「いただきます。」
柾樹の柔らかい声に、美桜はハッとした。
「どうぞ。」

人の指を褒めるけれど、柾樹の指も、美桜は素敵だと思う。
綺麗でスラッとしていて、繊細さを感じさせる。

その綺麗なカトラリーを操る動きを見ていて、食事が口元に入るのまで、つい、見てしまう。

「あの…お味、大丈夫ですか?」
「うん。美味いよ。美桜は、料理が上手なんだな。」

「お口に合って、良かった…。」
「今朝は…悪かったね…」

「いえっ!私も知らずに差し出がましいことをしてしまって。」
「いや…。美桜、明日は君のコーヒーが飲みたい。」

なんだろう、なんだか、泣きそう…。
美桜の動きが止まって、その瞳に涙がいっぱい溜まっているのを、柾樹は見た。

「美桜っ?!どうした?何か…、いや、無理はするな、無理しなくていい。」
「違います。嬉しくて。はい。明日、ご用意しますね。」

笑顔を向けた、美桜に、眩しそうに、柾樹は眼鏡を直した。
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