黒王子の溺愛
それは、情の話しではない。

会社の…統合の件だ。

黒澤が経営しているのは、グループ会社だ。直接経営に携わっているのは、そのメインとなる会社だが、それ以外にも子会社をいくつも経営している。

最初は資金を、という話もあった藤堂グループだが、一部を売却して、一部を黒澤の会社で買い取る方が益があると判明した。

それも、ここ数日のことだ。
藤堂家には売却益が相当に入るので、今後も生活に苦労することはない。

しかし、企業買収は、かなりの神経を使う。
自分の神経が張り詰めてピリピリとしていたのも、間違いはないが…、
いや、そうではない。

──経済界の華
憧れはあったのだ。
美桜に対して。

いつも父親と仲が良さそうに話していた。
日本人形のような。
経済界のお歴々もお気に入り、のお嬢様。
古風で、美しくて、たおやかで、そこに存在するだけで、華やかな人。

藤堂グループ自体は、経営は悪化はしていない。
けれど、大きくなりすぎている事で、問題があることは事実だ。

そんな話を藤堂氏としていて、
「君のような人にもらってほしいなあ…。うちの美桜…。」
「会社じゃなくて、ですか?美桜さんを?」
「両方かな…。そうしたら、安心なんだけど。」

会社のことを上手く回してくれるのなら、美桜をあげると、そう聞こえた。
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