黒王子の溺愛
その言葉に、美桜は血の気が一気に引いたのを感じた。

美桜は、身売りされたのだと彼は思っている。
あくまでも、政略結婚なのだと。
しかも、父が援助の交換条件として、美桜を提示したのだと。

違う…。
そう言いたいのに、あまりにもショックで、美桜の口からは、言葉が出てこなかった。

そして、また感情を感じさせない表情に戻った黒澤は、呆れたようなため息を残し、ソファに戻る。

「君は今日から俺のものだ。」
「え…。」

「俺の言うことには、従ってもらう。絶対服従だ。自由はないと思ってくれ。」
冷たく、淡々と紡ぎ出されるその言葉に、美桜はどうしたらいいのか、分からなかった。

あまりのことに、美桜は何も言うことが出来なかったのだ。

「返事は。」
「……はい…。」

「従えないなら、出て行ってもらう。その時点で、資金に関しても引き上げる。お父様も、会社も、困ることになるんだろう。」
「そんな…。」

美桜は、今回の結婚の件は、会社とは関係ないと思っている。
けれど、経営に関わっていない美桜には、会社のことは分からないのだ。

もしも、本当に父が経営難に陥っていたら?
黒澤の資金がなかったら、会社がなくなるような事態になっていたら?
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