黒王子の溺愛
「あの…私のせいで、お付き合いされていた方とお別れしたり…とかは…。」
「まあ…そういう訳ではないな。本当にどうしたんだ急に…。」

美桜は急に俯いた。
「だって…、柾樹さんはどなたかとお付き合いがあって、私との結婚を決意されたんですよね?私は…、柾樹さんが初めてだったんです…。」

なんだ、この可愛い告白。
「なんだ?俺を誘惑しているのか?」
「なんで、それが誘惑になるんです?」

「オトコに向かって、あなたが初めて、なんて告白は喜ばせる以外のなにでもないだろう。」

「そうなんですか?」
「そうだな。」

美桜が自分しか知らない、となってますます機嫌が良くなる柾樹だ。

「で?」
「先日、パーティに出た時、女性の方と、その…すごく仲良くお話されてて…、分かっています!お仕事上必要だって!でも…あんな風に笑わなくても…。」

正直、記憶力にはかなり自信のある柾樹だ。
だが、美桜が言っているのが、誰のことなのかさっぱり分からない。

「美桜、記憶にない。」
「ごめんなさい…。」

美桜がしゅん、となったのを見て、柾樹は美桜の顎に指をかけて持ち上げる。

「ん?なんで謝る?」
「だって、こんなつまらないこと…。」
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