黒王子の溺愛
いつも、ではないけれど、女性に優しくする、というスキルは、実は柾樹にはない。

けれど、突然、美桜がこんなことを言い出したのには理由があるはずだ。
柾樹はそれを聞いてみたかった。

「どうしたんだ?」
「ん…前に颯樹さんに言われて、気にしては、いたんです。」

アイツは全く余計なことを…。
しかし、颯樹のお陰で、今、美桜とこんな風になっているので、一概に責めることも出来ない。

「で?」
こんな風に膝の上に乗せていると、つい、指で頬をつついたり、ふにふにっと唇を撫でたくなってしまうのは、理解してほしい。

美桜もおとなしくされるがままなのは、嫌ではないからだろう。

時折、美桜も柾樹に触れてくれるのは、柾樹には、幸せな気持ちになって仕方のないことだ。

こんなことで、幸せな気持ちにさせてくれるのも、美桜しかいないと思っている。

本当に、どこにも出したくないし、誰にも見せたくない。

柾樹の元で、ずっと柾樹のことだけ考えていてくれたら、と思う。

──それで、俺は満足できるんだけど、な。

この腕に閉じ込めて、どこにも出さない…。

けれど、それは不可能なことだ。
2人には立場があり、夫婦として、表に出なければいけないこともある。

知ってはいたけれど、そういう時の美桜は本当に綺麗なのだ。

家で柾樹のために、いろいろしてくれる美桜も可愛くて愛おしいし、そういうところが好きだ。
けれど、外で、着飾っている美桜を見るのもまた、好きなのだ。

言うなれば、キッチンにいる美桜も、いってらっしゃい、と少し寂しそうなのも、お帰りなさい、と花が咲いたような笑顔なのも…あとは…ベッドの時の、…キリがないな。

結局、どんな美桜も可愛い、と、認めざるを得ない。
< 64 / 86 >

この作品をシェア

pagetop