黒王子の溺愛
「いかがでしたか?」
柾樹が出勤してきたところ、倉田が社長室を訪ねてきた。
「良かった。」
淡々と柾樹は返す。
今日も、お弁当持参だ。
倉田は素早くチェックし、相変わらず幸せなのだな、と安心する。
「そうですか。それは良かったです。」
「あの物件、問題ないと思う。本当にM&Aに出しているなら買う。」
「それは先方も喜ばれるでしょう。」
柾樹にしてみれば、あのホテルは美桜との思い出の場所なのだ。
その、美桜との思い出の場所がなくなるかもしれない、などということは、今の柾樹には考えられない。
まぁ、それを俺のものにする、というのもありだな。
「美桜さんはいかがでしたか?」
「喜んでいたな。」
「そうですか。それは良かったです。」
「上手くやってくれ。」
「はい。」
郊外に良いホテルを作ったのはいいが、こだわり過ぎて、初期費用に投資しすぎて、宣伝費用まで、行き届かず、困っている、と倉田は友人の知り合いから、相談を受けていた。
どうしようもないようなところなら、そのまま、残念だな、と流していただろう。
けれど、資料を確認して、そのこだわりの細かさに驚いた。
そのこだわりは、おそらく、黒澤の気に入るところだろうと思っていた。
案の定、その通りで、グループ化されれば、宣伝費は多くは必要とはしないはずなので、買収だけでも、いい宣伝にはなるはずだ。
これで、持ち直すだろう。
柾樹にも、いい息抜きになったようだし、少しプライベートを充実させることの楽しさを知ってくれたのならいい。
美桜と一緒になってからの柾樹は、今までとは全く違ってきていた。
今までは、機械的に融通の効かないところがあった。
正確無比で間違いを起こさない。
情に流されず、判断は正確。
それはそれで、頼りにはなる。
けれど、今は少し、柔らかくなった。
そして、人の意見を聞くようになった。
それは、そばにいる美桜のおかげなのだろう、と思う。
人として、魅力も深みも増したと感じる。
これからも、美桜と仲良く、そして、見た目だけではない、魅力のある経営者になっていって欲しいのだ。
。.:*・END。.:*・゜
柾樹が出勤してきたところ、倉田が社長室を訪ねてきた。
「良かった。」
淡々と柾樹は返す。
今日も、お弁当持参だ。
倉田は素早くチェックし、相変わらず幸せなのだな、と安心する。
「そうですか。それは良かったです。」
「あの物件、問題ないと思う。本当にM&Aに出しているなら買う。」
「それは先方も喜ばれるでしょう。」
柾樹にしてみれば、あのホテルは美桜との思い出の場所なのだ。
その、美桜との思い出の場所がなくなるかもしれない、などということは、今の柾樹には考えられない。
まぁ、それを俺のものにする、というのもありだな。
「美桜さんはいかがでしたか?」
「喜んでいたな。」
「そうですか。それは良かったです。」
「上手くやってくれ。」
「はい。」
郊外に良いホテルを作ったのはいいが、こだわり過ぎて、初期費用に投資しすぎて、宣伝費用まで、行き届かず、困っている、と倉田は友人の知り合いから、相談を受けていた。
どうしようもないようなところなら、そのまま、残念だな、と流していただろう。
けれど、資料を確認して、そのこだわりの細かさに驚いた。
そのこだわりは、おそらく、黒澤の気に入るところだろうと思っていた。
案の定、その通りで、グループ化されれば、宣伝費は多くは必要とはしないはずなので、買収だけでも、いい宣伝にはなるはずだ。
これで、持ち直すだろう。
柾樹にも、いい息抜きになったようだし、少しプライベートを充実させることの楽しさを知ってくれたのならいい。
美桜と一緒になってからの柾樹は、今までとは全く違ってきていた。
今までは、機械的に融通の効かないところがあった。
正確無比で間違いを起こさない。
情に流されず、判断は正確。
それはそれで、頼りにはなる。
けれど、今は少し、柔らかくなった。
そして、人の意見を聞くようになった。
それは、そばにいる美桜のおかげなのだろう、と思う。
人として、魅力も深みも増したと感じる。
これからも、美桜と仲良く、そして、見た目だけではない、魅力のある経営者になっていって欲しいのだ。
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