旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
 私もここで別れたらもう結婚できないかもしれないなんて焦るのだ。


 その結果、浮気をされて、結婚への淡いあこがれが砕け散ったのが皮肉だけれど。


「契約結婚なら嫌われても構わないわけだし、言えるだろ」


 誤解を解いておこうと思ったのに、より納得できる答えが返ってきて黙るしかなくなった。


「あのふたりの結婚式で、最高に幸せな夫婦を演じてやる」


 とんでもなく魅力的な言葉をささやかれて、私はうなずいていた。


 ふたりの裏切りのせいで結婚というものに魅力を感じなくなった今、契約結婚したって問題ない。
 しかも嫌になったら離婚してくれるとまで言っているのだし。


 私は自分にそう言い聞かせて口を開く。


「わかりました。契約しましょう」

「それは助かる。それじゃあ今日はたっぷり食事を楽しもう。肩の荷が下りたから純粋に料理を楽しめそうだ」


 彼は笑顔で大きなあわびに手を伸ばした。

 肩の荷が下りたって、そんなにお見合いをせっつかれるのが苦しかったのかな。
 毎日のようにしつこく急(せ)かされたらうんざりするか。


 契約結婚に対する不安がないとは言わないが、私もひとつ悩みが解消した気がして、霜降り肉の和風ステーキを口に運んだ。
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