HOME〜私と家族〜
レポート6
「…早くない?」

ものの10分ちょっとで食べ終えたタクと、自分のビビンバの残りを見て、自然と眉が寄る。

「前から思ってたけど、沙穂って猫舌だよね」

一生懸命、熱い鉄釜に入ってるビビンバをフーフーと冷ます。

「だって!すっごく熱いんだよ!」

生卵がジューと音を立てて卵焼きになるくらいなんだから!

「フーフーしないと食べらんねえんだ?」
「ちゃんと冷めるからいいの」
「ふっ、かわいいな」
「…はい?」

なんか変な言葉が聞こえたような。
空耳?
パッと顔を上げてタクを見る。

「焦らなくていいから」

すごい優しい眼差しで見ていた。
え、ちょ、なに…。
そんなに見つめられると、どうしていいのかわからない。
思わず視線を彷徨わせて、慌てて手を動かす。
…タクってそういうところある。
突然ドキッとするようなこと、する。

「あっつ、」
「焦らなくていいって言っただろ」

タクが、水を渡してくれる。
照れ隠しで慌てて口に入れたの、バレてるし。
ごく、と飲んでから気づいた。
…これ、タクのお水じゃん。
そういえば私のはさっき飲み干しちゃったんだったか。
気づいてしまったら、意識してしまう。
なんだか妙に恥ずかしくなってきて、私は必死で悟られないようにビビンバを頬張った。

「本当、…」

何かいいかけたタクの声に、ん?と反応するも、タクは首を振って窓の外に視線を移した。
変なの。
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