HOME〜私と家族〜
映画が終わると、もういい時間で、外は案の定暗かった。

「お姉ちゃんに連絡しないと」
「夕飯には間に合いそうだな」

行きと同じように電車で数駅、30分もしないうちに家に着いた。

「晩ごはんなんだろうね」

玄関のドアを開けて靴を脱ぐ前、沙穂、とタクに引き止められる。

「ん?どうしたの…」

首筋にひんやりと感じる金属の冷たさ。
胸元には、シャラリと光るペンダント。

「これ……?」
「うん、やっぱり似合う」

イヤリングに軽く触れてから、その手はペンダントのトップに。
その仕草にデジャヴ、まるで朝のよう。
…って見とれてる場合じゃない。

「ちょ、どうしたの」
「プレゼントだけど?」
「プレゼントって…今日いっぱいもらったよ?ご飯も、映画も払ってもらったし」

そう、実は私、自分の電車賃しか出してない。
お昼も、知らぬ間にタクが払ってたし。
意味わかんない。

「こないだ傷つけたから」

つ、と人差し指を軽く撫ぜる。
びくり、と体が震えた。

「そんなの…私の不注意だし、とっくに治ったのに」
「言ったろ、俺のワガママだって。それとも、嫌い?」

鏡に写った姿を見る。
正直、とても好みのデザインだった。
綺麗。それが素直な感想。

「そんなことは…ない、けど」
「じゃあもらって」

そこまで言われてしまっては、何も言い返せない。
私はコクリと頷いた。
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